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【徒然小噺】育休金――過誤返金と再申請の嘆き(2025.8.12)

育休金の申請や受給の流れは、一見シンプルな繰り返しだ。だが、ひとたび過誤が生ずれば、待っているのは長く険しい嘆きの道のりだ例えば、支給単位期間の中で、僅か1日余計に受給してしまった場合。常識的には、その1日分だけ返せば済むと思うだろう。ところが、制度は部分返納を許さない。過誤があった期間分は、まるごと全額返納しなければならない。これが「嘆きポイント」の1つである回収は、手間も時間も要する。まず補正・訂正願を受けた職安が内容確認し、労働局へ連絡。労働局から「納入告知書」が職安に届くまで3~4週間。「納入告知書」は、事業主を介さず受給者本人に直接送付させよう。乳児と奮闘する本人が即返納しても、国庫でのデータ反映と職安の処理を経て「回収完了」合図を得るまで更に1~2週間。合図がなければ再申請できない。リカバリに長期間を要することこそがもう1つの「嘆きポイント」だ原因は単純で、職場復帰日の誤認識、次子の産休の申告漏れ、育休延長届の失念、出勤実績の未共有など。誰も悪意はないのに、制度は一切容赦しない。返納時の納入手数料が不要であることに救われると、妙に錯覚する。しかし、時間と気力はたっぷり払う。現場では、出勤簿と支給控除一覧表を睨みつけて、日数と金額のチェックに全集中するのが恒例行事だたかが1日、されど1日。重要度のランクを見極め、要所は入念に確認する──その緩急のひと手間が、長い嘆きの旅路を回避するプロの流儀である。

※実際に受けた質問や相談に関して向き合った諸々を「新聞コラム形式」で綴りました。

※投稿者:山田留理子(特定社労士)

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