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【徒然小噺】定年は、満60歳?60歳?(2025.10.23)

ある企業の就業規則を点検してみると、定年規定に「満60歳」と「60歳」が混在していた▼法律の世界では、「年齢計算ニ関スル法律」に基づき、年齢は誕生日の前日が終了した時点で加算される。つまり、「満60歳に達した日」とは、60歳の誕生日の前日を指す一方で、「60歳」という日常的な表現は、多くの場合、60歳の誕生日当日を想起させる▼今回の事例では「属する年度の末日」という文言と組み合わさって、定年退職日が年度をまたぐか否かという深刻な問題に発展しかねなかった。雇用契約の終了という法的行為において看過できない「火種」である▼「これまで大丈夫だった」理由に笑った。職場の伝言や慣例に救われていた。規則をうまい具合に軽視できていた結果とも言える。「属する月の末日」でなくて良かった▼就業規則は本来、画一的処理による事務の効率化と公正性の担保による紛争の予防や解決を狙って仕組まれるものだ。しかし、実際には不完全な規則が作成され、無頓着に実務が営まれていることは多い▼ちなみに、誕生日の前日が終わる瞬間と当日が始まる瞬間は、同一の時刻である。しかし、雇用や社保・労保の処理では、期間計算が重要となる。これは、日を単位とする期間計算において、期間満了を起算日の応当日の前日の終了時点とする民法第143条第2項の規定を年齢計算に準用していることによる▼私たちは誕生日当日に年を取ったと感じるものだ。その一日のズレに、法と人との歩調の違いが滲む。

※実際に受けた質問や相談に関して向き合った諸々を「新聞コラム形式」で綴りました。

投稿者:山田留理子(特定社労士)

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