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【徒然小噺】当日朝の病欠有給申請と派遣元(2025.7.25)

 「体調が悪いので、有給で休みます」――派遣労働者から当日朝の連絡が入る。代わりがいなければ、信頼を失い、売上も消えるが、日額相当賃金の支払は義務だ年次有給休暇は、労基法39条により「請求のあった時季に与えなければならない」。たとえ当日連絡であっても、体調不良というやむを得ない理由であれば、会社の「時季変更権」は使えないとされるのが通例(通達・行政解釈)。最も割を食うのは派遣元だだからこそ、備えがいる。「就業規則の整備」は実務的な防波堤となる。有休取得に際しては、事後申請であっても「申請書」「報告義務」「診断書提出基準」を明文化し、必要なら前夜の体調報告も求める設計が望ましいもうひとつの工夫が、「緊急応援要請に応じた者への手当」だ。千円でも手当を出す。これは労基法89条に則り、支払基準を明示すれば合法だ。むしろ、インセンティブ設計として積極的に活用すべき制度といえる。反対に、当日欠勤常習者(自己保健義務違反者)にはマイナス評価を課すことも検討に値するさらに、派遣契約そのものにも知恵を絞りたい。「実稼働時間ベース」ではなく「稼働の有無を問わず一定の支払いを受ける」という保証型契約だ。もちろん派遣先の合意が必要だ法律は常に公平とは限らない。だが、ルールのなかで最適解を探すのが、現場を支える者の仕事だ。怒るでも嘆くでもなく、淡々と制度の内側で活路を見出す。その積み重ねが、いつか理不尽を超える力になると信じたい。

※実際に受けた質問や相談に関して向き合った諸々を「新聞コラム形式」で綴りました。

※投稿者:山田留理子(特定社労士)

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